僕はなぜ雪山に登るのか2018年2月3日

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年末年始やゴールデンウィーク、旅行のハイシーズンとなるこれら時期は交通のラッシュや交通事故のニュースが恒例です。

そのなかで、同じく恒例のニュースが「雪山の遭難事故」です。

 

毎年毎年、積雪期の山に人が入り遭難する人が後を絶ちません。どう考えてもリスクのある山に行き、命を落としたり救助隊のお世話になってしまったり・・・

 

こんなニュースが報道される度に「冬山に登るやつは自殺したいのか」とか「死にたいなら一人で勝手に死ね」とか、散々なことを言われるわけです。僕も山を始める前は雪山に行く人の気持ちなど全く理解できず、「生死という概念の飛んでしまった、ちょっと頭のおかしい人たち」くらいに思っていました。

 

しかし、今では「雪山は山のハイシーズン」と思うくらいに雪山に魅せられ、かつての僕が考えていた「頭のおかしい人たち」のように雪山に登っています。

 

今回は、非登山者が理解に苦しむ「なぜ雪山に登るのか」というテーマについて、僕個人が思う「雪山に登る理由」を考えてみました。

 

あくまで僕個人の意見なので、必ずしも全ての登山者に当てはまる事ではない事をご理解ください。

 

1. 死にたいわけではない

まず始めに、「冬山に登るやつは自殺したいのか」という疑問に対してですが、当たり前ですが

 

死にたいわけではありません。

 

もちろん、雪山は夏山よりも危険が多く死のリスクが高い場所です。危険を高める要素としては

  • 天候面
  • 技術面

の2種類があると思います。

 

「天候面」は冬特有の気温や風の強さに関するものです。冬山は氷点下2桁は当たり前で、さらに風が吹くと体感気温は風速1m/s毎に1℃下がります。汗をかいて体を濡らさないようにしたり、夏山よりも防風性能の高いアウター、保温性能の高いダウンを用意する必要があります。

 

「技術面」は滑落など登攀技術に関わる危険性です。雪山の難しいところは、同じ山、同じルートでも雪の質によって難易度が変動することです。よって、夏山よりも入念に調査をし、登れる山なのかどうかを慎重に判断する必要があります。

 

これらの危険性を認識して、事前の調査や装備の拡充、体力強化によってリスクは大きく下げることができます。

もちろん、相手は自然なのでいくら努力をしても不確定要素は絶対に残ります。自分で考えられるリスクに対して十分に準備をすることで、安全な登山を心がけています。

 

では、雪山は危険なだけなのか?じゃあ夏山だけでいいんじゃないの?

いいえ、そうではありません。

 

2. 登山者の考える「雪山」と非登山者の考える「雪山」

 

僕が山に登る前の雪山のイメージはこんな感じでした。

  • めっちゃ吹雪いてる
  • 視界がない
  • 寝たら死ぬ
  • 一歩間違えたら死ぬ

 

 

しかし、雪山の登るようになった今ではこんなイメージです。

  • 夏山とは段違いのクリアな景色
  • 星が綺麗に見える
  • 美しい白銀の世界

 

山に登る前は「雪山はただ危険なところ」という認識でした。

それに対して今は「雪山は綺麗なところ」という認識になっています。

この認識の差が登山者と非登山者の大きな違いだと思います。

 

雪山に登る人は、何も危険を感じたいから登るわけではなく、雪山にしかない景色や達成感といったポジティブなものを求めて登っています。

 

3. ただただ、美しい景色を求めている

山の上から見る景色のクリアさは夏山よりも一段も二段も違います。雪を纏った山は夏とは全く違う表情で、それを間近に見たときの迫力は冬山でしか味わえないものです。

八ヶ岳 硫黄岳

壁のように立ち並ぶ北アルプスの山々

強風が雪を削ってできるシュカブラ

 

登山をする人の中でも、雪山に登るのは一部の人しかいません。この景色は雪山に登ろうと思って実際に行動した人しか見られない特別な景色です。そんな特別感も相まって、より一層綺麗な景色に見えます。

 

一度雪山の景色を味わってしまったら、もう病みつきになります。

 

4. 夏山では使うことのないギアを駆使する楽しさ

冬山に登るにはいくつかの道具を使う必要があります。

雪面で滑らないようにするアイゼン

雪面に刺して確保に使ったり滑落停止に使うピッケル

ふかふかの雪でも沈まないようにするワカン・スノーシュー

 

アイゼン

ピッケル

ピッケルを使って斜面を登る

やっぱり僕は男の子なので、こういう道具そのものに魅力を感じてしまうわけです。アイゼンとかピッケルとか、なんかトゲトゲしててかっこいいじゃないですか!

なんといっても、こういう道具を使いこなせばこなすほど登れる山は増えていき、そのような山ほど登るのが楽しいです。

 

5. ほとんどの生物が生きられない環境に身をおく「非日常感」

エビの尻尾のようにこびりついた霧氷

 

始めにも書きましたが、雪山は平地ではまず経験する事の無い気候を持っています。氷点下二桁の気温に加えて、稜線で吹き付ける暴風。稜線で素肌を出そうものなら凍傷になるような特異な世界です。

 

そんな場所にいると、日常のことなど考える隙もなく、自分が今いるその世界に集中することができます。また、自分の力でこんなところまで来れたのだという達成感も大きいです。

そういう意味では、スリルが楽しさに繋がっていると言えるのかもしれません。しかし一つ言えるのは、マジで死ぬかもしれない状況というのは全然楽しく無いということです。

 

ここまで書いたことが、僕が雪山に登る理由です。

 

6. 雪山の魅力に捉われ過ぎず、冷静でなければいけない

このように、条件が良くて安全に過ごすことができれば、雪山は最高の場所なのです。これが、多くの登山者を惹きつける理由だと思います。

しかし、「登りたい登りたい」と気持ちばかりが先行し、冷静な判断ができなくなった時に事故は起きやすくなります。

どうにもならない想定外の状況というのはあると思いますが、それ以外の想定できたリスクは無くしていかないといけません。

 

偉そうなことを書きましたが、僕もまだ初心者なので自戒の念を込めて書いています 笑

 

山を登る前に、あるいは登っているときも一歩引いて「このまま登って良いのか?」と常に考えてクールな思考を保つことが、雪山登山者の義務なのかなと思います。

 

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Comments

  1. ryu より:

    本当に迷惑な考え方だと思います
    今までに命を落とした救助隊員の方々を思うと
    憤りを感じます

    • hiko より:

      こんにちは。
      ただ楽しいからと言って危険を冒し、他人に迷惑をかける行為はあってはならないと僕も思います。
      どのくらいの場所、レベルなら事故に遭わないのかを理解して、その中で楽しまなければいけないと考えています。

      雪山登山の是非について答えを出すことは僕にはできませんが、単純に「雪山にもいいところがある」ということを伝えたいというのがこの記事の意図です。

  2. あるのすけ より:

    なんとなく、わかります。
    冬山は物凄く綺麗です。
    教えていただいてありがとうございました。

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