9月末、下界も気温が下がってきて夏山の終わりを感じるこの季節。
街の木々はまだ色づいてないけど、高い山の上では紅葉が始まって山の季節はすっかり秋。
もう9月末ともなれば雪山に意識が向いてしまうものですが、今年は珍しく夏山納めをしようと思い立ちました。
目指すは南アルプス 鳳凰三山。
地蔵岳・観音岳・薬師岳の3つのピークから構成される鳳凰三山。最高峰は観音岳で標高2840m。
山深い南アルプスの中では比較的アクセスの良い山です。
例えば有名な北岳は車で駐車場まで移動したあとバスに乗り換えて広河原までいかなければいけないし、赤石岳なんて高速を降りてから一般道80kmくらい走ってさらにバスに乗って凸凹道を1時間揺られてやっと椹島登山口に辿り着ける。
それに比べると鳳凰三山はマイカーだけで登山口に辿り着けるのでかなりお手軽なのです。
日帰り可能な3000m級の仙丈ケ岳と並んで南アルプス入門と言われている鳳凰三山、「結構チョロいんじゃないのー?」なんて軽いノリで挑んだこの山ですが、果たして・・・
1. 今回のルート
鳳凰三山への登山口は夜叉神峠と青木鉱泉が有名です。地図を見ての通り夜叉神峠からの方が距離は長いのですが、登山口の標高が1770mと結構高くて、標高差1000mちょいで登れます。
それに対して青木鉱泉は水平移動距離は短いものの標高は1100mで夜叉神峠よりも600m以上低いです。山頂との標高差は1700mで、結構な標高差を登らなければなりません。
・・・という事を知ったのは下山した後の話です!!!笑
あまりに登りがキツかったのでこの記事を書きながら調べました。笑
地図の水平移動距離だけを見て今回は青木鉱泉を選択しました。
1日目:青木鉱泉からドンドコ沢をひたすら登って行きます。道中滝が何箇所もあって、滝めぐりを楽しみながら登って行きます。(必ずしも楽しむ余裕があるとは言っていない 笑)
この日は鳳凰小屋でテント泊。
2日目:早朝に小屋を出発し、稜線に出て鳳凰三山のピークを縦走します。薬師岳から中道ルートに折れて青木鉱泉に下山します。
ドンドコ沢のルートは危険箇所こそ無いもの、足をかけにくい岩をよじ登る事が多く、重装備だとかなり体力を削られます。下山のルートとして使用するのはあまりオススメできません。
下山に使った中道ルートはひたすら単調な景色が続きます。ドンドコ沢と違って岩があったりする訳ではないので歩きやすく、下山向きのルートです。
あと個人的な感覚ですが、山と高原地図に書かれているコースタイムが長めに記載されている気がします。鳳凰小屋までの登りは休憩込みでコースタイムより1時間早く登れてしまいました。
2. レポート
深夜1時に車で自宅を出発。登山口の青木鉱泉にたどり着いたのは午前3:30。
この時間から登り始める人もいましたが、自分は鳳凰小屋止まりなので遅い出発でも余裕。6:30まで仮眠をとりました。
午前7:00, 青木鉱泉から登山開始!
初っ端から人工物だらけの道。護岸工事をしているようで、登山道は迂回路を進みます。
迂回路を超えるといよいよ登山道らしくなってきます。
ドンドコ沢のドンドコってなに?笑
始めは何度か沢を渡りながら、南アルプスらしい深い原生林の道を進みます。このあたりは木々は緑に生い茂っていて、まだまだ夏山を感じます。
しばらくすると少し景色のひらけた場所に出ます。
この登りはひたすら森の中を歩くので、こんな展望所は貴重なヒーリングスポット。
やがて南精進ヶ滝という大きな滝に到着します。ドンドコ沢のルート上には4つの滝があり、どれもスケールの大きい滝です。
二段になっているこの南精進ヶ滝はその中でも印象的な滝の一つです。
さて、ここからがだんだんと辛い登りになってきます。なんとなく、ドンドコ沢のドンドコの意味がわかってきた気がします。笑
天気は晴れだったのですが山には一部雲がかかっていて、登山道も雲の中へ入っていきます。
基本霧は景色が見えなくなって嫌なものなのですが、森の中の霧はとても幻想的で、それでいてちょっと怖い気持ちにもなる不思議な雰囲気です。これがまたクセになるんですよね 笑
3つ目の滝、白糸滝に到着。
2つ目の滝である鳳凰の滝は疲れていたのでスルーしました 笑
霧が濃くて滝の姿がよく見えません。チラ見しただけで再び登り始めます。
やっと雲を抜けて太陽が見えてきました。でも登山道は相変わらず変わらない景色ときつい登り。
白糸滝から約1時間、最後の滝である五色滝に到着。
登山道から滝まで道が伸びているので、荷物をデポして見にいきます。
五色滝は滝壺まで降りる事ができます。近くによると飛沫が飛んできて空気もヒヤッとしてきます。
五色滝からさらに30分ほど登ると、今までの地獄のような登りが嘘だったかのように平和な庭園のような世界が現れます。日差しが差し込んで沢の水が静かに流れていて、昼寝でもしたくなるような場所です。
今までの荒々しい沢の急登の世界とのギャップが大きすぎて、非現実的な感覚にもなります。
待望のオベリスクも顔を見せてきます。
写真ではオベリスクが結構遠くに見えますが実際にはとても近くに感じ、やっと山頂近くまで登ってきた事を実感します。
庭園に出てから少し歩くと、今日の幕営地 鳳凰小屋に到着です。
小屋の皆さんがとても明るい方ばかりで、のほほんとした雰囲気に疲れた心が少し癒されました。
この日は三連休中日。テン場は瞬く間にいっぱいになり、テントがギッチリ詰まっています。
僕は割と早めに到着したのでまだ空きが多く、小屋の人が奥の静かな場所を教えてくれました。
テントを立て終わったのは昼過ぎだったので、その日のうちに山頂まで足を伸ばす事もできましたが、次の日も朝は晴れるようだったので小屋でのんびり過ごす事にしました。本当の事言うと、深夜に出発して仮眠もロクに取れなかったので疲れてました。笑
テントの中でひたすら本を読んで過ごし、次の日に備えます。
2日目、朝5時に鳳凰小屋を出発。少しずつ空が明るくなってくる時間帯です。
森林限界に近づくと雲海が見えてきました。
柔らかい砂の急斜面を登っていきます。ズルズルと滑ってなかなか苦労します。
地蔵岳(2,764m)登頂。
ギリギリ日の出と同時くらいで登ってくる事ができました!
地蔵岳はその名の通りお地蔵さんがたくさん置かれている山です。お地蔵様と一緒に日の出を眺めます。
この地蔵は子授け地蔵と呼ばれ、子どもを授かりたい人が下界に地蔵を下界に持ち帰り、子供が生まれたら2体にして持って帰ってくるというものらしいです。
普通に考えてこんな石の地蔵を担いで山を歩くとか超キツそうです。笑
背後には甲斐駒ケ岳のモルゲンロート。
すっかり日が昇ったところで地蔵岳を後にします。
ここからは鳳凰三山の3つのピークを縦走していきます。縦走というほどの距離でもないのですが、その稜線の迫力は素晴らしいものです。
鳳凰三山は甲斐駒ケ岳と同じく花崗岩の山で、白い岩稜がとても美しい。
向かいには北岳を含む白峰三山の山々が間近に見えます。
去年はあの稜線を縦走したんだったなぁ…
近くを歩いていた御年配のパーティが農鳥岳を指差しながら
「あそこは小屋とおっさんが有名なんだ。小屋がヤバい。」
なんて噂をしていました。南アルプスに登ると必ず農鳥小屋の話題を耳にします。この知名度と人気(?)はさすがである・・・
観音岳への登り返し。
こう見ると稜線はすっかり紅葉に色づいています。もう秋ですねー
真っ白な稜線の砂。まるで別の星にでも来たかのよう。
観音岳(2,840m)
ここが鳳凰三山の最高峰です。
稜線からは白根三山のさらに奥にある赤石岳や悪沢岳まで見渡す事ができる。
赤石悪沢岳は1ヶ月前に縦走したばかりなので、なんだか嬉しい気持ちになる。
観音岳から薬師岳への下りでは背後に富士山が大きく見える印象的な景色が続く。
富士山の反対側には甲斐の町を挟んで八ヶ岳が見える。
麓の町から近いこの山は目下に里を眺める事ができて、文字通り「空中散歩」をしている感覚になる。
鳳凰三山最後のピーク、薬師岳(2,780m)に到達。
薬師岳の山頂は広く開放感のある山頂です。縦走が終わり、ほっと一息をつくのに最適な場所で、皆さん南アルプスの山々を眺めながら昼食をとっていました。
景色が見れるのはこの薬師岳が最後。ここから下山路の中道ルートに入ると程なくして樹林帯に入ります。
こうやって稜線から下山するときはいつも「帰りたくない病」が発症します。しかし、一方で一刻も早く温泉に入りたいという気持ちもあり・・・
北岳を眺めながら少しのんびりしたあと、覚悟を決めて下山を開始します。
富士山との別れを惜しみながら下山していきます。
下山のコースタイムは約4時間。始めこそ岩のくだりがあったりするものの、大半が単調な道です。
途中、苔生した森のエリアもあったりしますがそんなものはすぐ飽きてしまいます。
標高を800mほど下げると植生が変わって笹の道になります。ここまでノンストップで歩いてきましたが、一刻も早く下山したいため最後までノンストップでいく事に決めました。
やっと登山口まで下山ー!さすがに3時間ノンストップで下山し続けると疲労がヤバい 笑
ここからさらに30分ほど歩いて青木鉱泉まで帰りました。
帰り道は中央自動車道で案の定3連休最終日の大渋滞に巻き込まれ、帰宅したのは結局夜の11時くらいでした。
3. まとめ
去年と今年で南アルプスの山には結構登っていて、かれこれ主要なピークは7座登っているので南アルプスの雰囲気というものが分かってきた気がしていました。
この鳳凰三山も始めこそ僕の知っている「南アルプス」の雰囲気でしたが、稜線に出るとそこは他の山にはない独特の世界でした。
足元だけ見れば白い砂浜、顔を上げると深い山の中というなんとも不思議な稜線でした。
「入門」という噂を聞いてドンドコ沢を登ると結構苦労します。笑
おそらく夜叉神峠からの方はそこまでハードではないはずなので、南アルプスに慣れていない方はこちらのルートを選択すると良いと思います。
ドンドコ沢は登りが長く急なだけで危険な場所はありませんが、コケないように集中して歩くようにする必要があります。
なんというか、久々に感動した山でした。
やっぱり自分は南アルプスが好きだなぁと改めて実感しました。
コメントを投稿する