(2017.12.9 updated)
海外の山に登ってみたい。
登山をしている人なら誰しも思う事でしょう。日本には無い急峻な岩山や4000m,5000mの高峰の写真を見て、強い憧れを抱く人は多いはず。
僕もその例外ではありません。
今回僕は「ヨーロッパアルプスの山を歩きたい」という夢を叶える旅に行ってきました。
この記事では、僕が今回初めての海外登山をするにあたって準備した事や必要だと感じた事、現地で経験した事などを書いていきます。
僕は山も海外旅行も素人なので、ここに載せる情報が100%正しいとは限りません。言うまでも無い事ですが、もしこの記事を参考にして山に行かれる方は御自身でよく情報を調べた上で準備するようにしてください。
1. 情報収集の基本
1-1. 一番必要なのは情報収集能力
個人で海外の山を登る上で必要不可欠な能力は情報収集能力です。はっきり言ってこれができなければ個人で海外の山には登れないし、逆にこれができれば誰でも海外の山に登れます。
日本で山に登る時にやることは、
- 登る山の目星をつける
- 地図を入手してルートを調べる
- 麓の自治体や山小屋のHPを見てルートの状況を把握する
- ヤマレコや個人のブログを見てルートのレベルを把握する
- 天気を調べる
こんなところでしょうか。海外登山でもやることは基本的に同じです。
しかし、大きくハードルを上げる要素が存在します。それは、「言葉の壁」と「情報のありかが分からない」という点です。
1-2. ある程度辞書無しで英語を読める力は必須
情報収集をする上で大きなハードルとなるのが「言葉」です。
標高の低いアルプスの山というのは日本では知名度がないため、まず日本語の情報は皆無です。
必然的に現地の言語、もしくは英語で情報収集をすることになります。
現代は便利な世の中で、google先生に聞けば知らない英単語もわかります。しかし、英語を読む時にいちいちググっていたらそれだけで膨大な時間がかかります。
山に登る方はわかると思いますが、気合の入った山行をするとき、ヤマレコや個人のブログを読み漁るのではないでしょうか。それと同じ事を英語でやると思えば、かなりの量の英文を処理しなければいけないことは明白です。
事前準備段階なら最悪英語ができなくても時間と根性で解決できるかもしれません。
しかし、情報収集は現地でも行う必要があります。
現地で電車に乗ったり、案内板を見たり、山の情報を見たり・・・これらを異国の田舎でやる必要があります。一人で情報をキャッチして一人で行動しなければいけません。それを考えると、余裕を持って行動するためにはそれなりの英語力は必要になります。
1-3. 現地言語の情報はgoogle翻訳に頼ろう
「英語ができても現地言語はどうするんだ!」
と思われた方。その答えですが「自力ではどうしようもありません」。さすがに英語と同レベルでもう一言語できる人は稀でしょう。
しかし手はあります。google翻訳です。
google翻訳を使用する上で、一つ大事なポイントがあります。それは、日本語に翻訳するのではなく英語に翻訳するということです。英語をgoogle翻訳で日本語にすると訳わからない文章になることが多いのは知っての通りと思います。しかし、スペイン語やドイツ語などのヨーロッパの言語を英語に翻訳すると、そこそこ読める文になります。日本語と英語では、そもそも文型からして異なりますが、ヨーロッパの国の言語は文型が英語と似ているため、ある程度正確に翻訳ができるのだと思います。
google翻訳はサイトのURLを入力するとページ全体の文章を翻訳して表示してくれます。これを利用して、現地言語のサイトを英語で読んでいけば、ある程度正確に情報を収集することができます。
2. 登る山を選ぶ
2-1. ビッグネームの山は難易度が高い
ヨーロッパの山で有名なところといえば、マッターホルン、モンブラン、モンテ・ローザとかそんなところでしょうか。しかし、このいずれもその辺の週末登山者からすると高い登攀技術を必要とします。モンブランならガイドを雇えばなんとか行けそうな感じがしましたが莫大な費用がかかるようでした。給料日じゃないとハーゲンダッツも買えない僕にはとても無理そうでした。
2-2. 僕が最初の海外登山に選んだ山
しかし、アルプス山脈には無数のピークがあり2000m級のものも数多く存在します。標高は低くともそこはヨーロッパアルプス。日本とは全く違う山岳景色が広がっています。
「個人でアルプスに行くなら日本で登るのと同じ標高、レベルの山から始めよう。」
そう思って僕はこの山を選択しました。
Kaisergebirge
オーストリア アルプス、Wilder Kaiserというエリアにある山脈です。最高峰はEllmauer Halt(2,334m)。
標高こそ低いですが、その山容は日本アルプスの3000m峰に勝る急峻さ。まさにアルプスの山といった感じです。
MTBからハイキング、ロッククライミングまで楽しめる、まさにアウトドア天国な場所です。
2-3. 山岳ガイドのルートをパクろう
どうやって山の情報を収集するのかを書いていきます。
アルプス山脈は広大で、本州の半分以上の大きさがあります。地図を見ながら山の名前を調べていたらキリがありません。
僕が調べていく中で一番効率的だと感じたのは「現地の山岳ガイドのページを調べる」というやり方です。
次のようなワードでググって見ます。
“alps in europe guided hike”
そうすると、このようにアルプス山脈のトレッキングガイドツアーのページがいくつも出てきます。
山岳ガイドのページを見ることのメリットは
- 必要日数を把握できる
- コースのレベルを把握できる
- 必要な装備を把握できる
この3つにあると思います。これによって、どの山なら自分のレベルで登ることができるのかを容易に知る事ができ、さらには計画を丸パクリする事で何も考えずに計画を立てる事ができます。
2-4. TripAdviserのフォーラムを見よう
山を調べる上で、もう一つ役にたつのがTripAdviserのフォーラムです。
フォーラムはyahoo知恵袋みたいな感じで、観光についての質問を投げると有識者が回答をしてくれるというシステムになっています。
このフォーラムでは
- 「ドイツのアルプスで3泊4日くらいで登山したいんだけど、オススメのところない?」
- 「9月下旬にアルプス登りに行きたいんだけど、ギリギリですか?」
という感じの質問がされています。これに対して現地の登山者が回答をしているので、生の情報を得ることができます。特に、オススメの山の情報などは現地の登山者だけが知っている事なので、かなり貴重な情報です。
風景は山を選ぶ上で最も重要な要素だと思います 笑
2-5. オーストリア・チロル州は情報が充実
僕がアルプスを調べていく中で一番情報が充実していると思ったエリアはオーストリアのチロル州です。
チロル州のページには、観光情報として登山や長距離トレイルのルート、山小屋情報が数多く掲載されています。
中でもEagle Walkという長距離トレイルの情報は非常に使えると思いました。
Eagle Walk(独:Adlerweg)は全長413km、チロル州のアルプスを横断する長距離トレイルです。かなりの長距離ですが、24stageに分割してモデルコースが紹介されています。この1ステージは1日で歩ける距離に設定されているため、例えば「9日間歩くからステージ10から18を歩こう!」というように、使える日数に合わせて計画をアレンジするのが非常に容易です。
今回僕が歩きに行ったWilderKaiserはEagleWalkのスタート地点に位置しているためEagleWalkの一部を歩いてきました。道はよく整備され、道標にはしっかりEagleWalk(Adlerweg)のロゴマークがついており、迷う心配もないように感じました。
自分でイチから計画立てるのが辛いという人はEagleWalkを有力候補に入れて良いと思います。
2-6. ガイド本はまずまず使える
Cicerone Trekking Guideというシリーズがあります。山域毎のコースが一冊にまとめられていて、ヨーロッパのかなり広い範囲の山域をカバーしています。
中身は英語ですが、Amazonでkindle版を購入する事ができます。
ヤマケイ アルペンガイド的なものを想像していたのですが、あれよりは情報量は薄いです。モデルコースの簡単な地図、山域の気候、登攀グレード、必要な装備等の情報は得られます。一応購入はしたものの、詳細な計画を詰める段階では殆ど使えなかったので、参考程度のものだと思った方が良いです。
2-7. ピレネーに登るならスペインのヤマレコ”Wikiloc”を見よう
この記事のテーマから外れてしまいますが、ピレネーも検討していたので一応調べ方を書いておきます。
ピレネーのルートを調べるならWikilocというサイトが非常に使えます。
Wikilocは日本でいうところのヤマレコみたいなもので、歩いたルートの写真とGPSのデータ、簡単なレポートをユーザーが投稿しています。ヤマレコと違うのは、Wikilocは登山だけでなくサイクリングからカヤックまで、アウトドア総合的なルートを扱っているところです。ハイキングや登山のカテゴリを選択し、登りたい山の名前で検索をかけて使います。
3. 詳細を詰めていく
3-1. 山岳地図を確認する
海外の山の地図は国内では入手困難です。海外のアマゾンから個人輸入するくらいしか手段はないと思います。
そんなところで、便利なのが”KOMPASS karten”のウェブ登山地図です。
日本でいうところのYAMAPとかヤマケイオンラインの地図みたいな感じです。
日本の登山地図と違ってコースタイムは載っていませんが、等高線、登山道の位置、危険箇所、山小屋の位置など基本的な情報を得ることができます。
先に述べたwebの情報と組み合わせることで、登山計画を立てるのに必要最低限な情報を揃えることができると思います。
3-2. 空港を決める
何があろうと登る山が100%確定しているならば山から一番近い空港を選べばいいと思います。
しかし実際には複数の山の候補を持っておき、出発直前まで天候等を勘案しつつ、直前になって登る山を確定する必要があると思います。航空券は出発の数ヶ月前に取るのが普通だと思うので、その時点から候補がコロコロ変わる可能性もあります。実際僕も仕事が忙しくて山の調査をする時間がなく、出発直前まで候補すら絞り込めていない状況でした。
そのような事情に対応するためには、様々な山域にアクセスしやすい空港を選択する必要があります。
無難なところはミュンヘンの空港だと思います。
ミュンヘンからは以下の山域に1日でアクセス可能です
- イタリア
- オーストリア
- スロベニア
- スイス
ミュンヘンは中欧の交通の要衝なので、各方面への高速バスや電車が出ています。アルプス山脈の中央から東端まで比較的容易にアクセス可能です。
まだ具体的に山は決まっていないという場合は、とりあえずミュンヘン空港を選択しておけば間違いないと思います。選択肢は無限大です。
3-3. 9月以降は降雪の確認が必要
日本の山小屋は営業終了日がはっきりしている事が多いですが、ドイツやオーストリアの山小屋は「天候によって1週間程度前後することがあります」となっている事が結構多いです。
アルプスの2000m以上の山は9月中旬から冠雪する可能性があるため、「9月末まで営業」としていた山小屋が早く閉まってしまうという事もあります。
そのため、秋に登山しようとしている人は天候をこまめに確認する必要があります。
山には大体スキー場があり、ウェブカメラの映像が公開されている事が多いのでそれを見れば雪がどれくらい積もっているか、晴れの割合はどのくらいかを把握する事ができます。
山小屋が営業しているかどうか、ウェブカメラの映像と合わせて確認し、装備や計画を考えます。
4. 候補にしていた山
ここでは、登れそうだと思って候補にしていたけど、色々理由があって結局行かなかった山を書いていきます。
4-1. EagleWalk stage19-24 (オーストリア)
4-2. Karnischer Höhenweg (オーストリア)
4-3. heilbronner weg(ドイツ)
4-4. ピレネー山脈 mont perdu(スペイン-フランス)
4-5. Julian Alps(スロベニア)
5. 海外登山は決して夢ではない
「海外登山なんて普通の趣味の登山者がやるものではない」と思っている人も多いと思います。
僕が今回登った山はそんなに高い山でもないし所謂アルプスの厳しい山行ではないけど、「ヨーロッパアルプスの山に登る」という目標を叶える事ができました。
僕は高い英語力を持っているわけではないし、登山の上級者という訳でもありませんが、やろうと思えばできるものです。
この記事に書いた僕の経験が、同じ志を持つ人の初めの一歩に繋がったら嬉しいです。
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